2018.6.13

【イベントレポート】Advertising Week Asiaレポート「B2Bコンテンツマーケティングの最新動向」

加藤 真由(日本ビジネスプレス)

マーケティング 分析 メディア
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 2018年5月14日〜17日に開催されたマーケティング&コミュニケーションのイベントAdvertising Week Asiaに、KDDIの森本祐吏氏とともに当社企画開発部の鵜山雄介が登壇しました。B2Bコンテンツマーケティングの最新動向をテーマに、オウンドメディアの意義と価値向上プロジェクトについて両者は何を語ったのか−−−。満席となり熱気に包まれたセッションのダイジェストをお届けします。

データ分析のプロセスを省略してはいけない

 KDDIは「ビジネスを革新するデジタルトランスフォーメーション」をテーマとしたテーマポータル「be CONNECTED.」(日本ビジネスプレス運営)にスポンサードしています。“テーマポータル”とは、特定のテーマにそって複数のメディアの記事をひとつのインターフェイスに集結させた特集サイトのことです。KDDIはこの特集サイトをどのように活用しているのでしょうか。

 ソリューションマーケティング部の主任であるKDDIの森本氏は、「KDDIの顧客における購買サイクルにおいて欠落・脱落を最小化にするのが我々のミッション」であり、そのために活用しているのがABM(アカウント・ベースド・マーケティング)と語ります。

 森本氏は、デジタルマーケティングにおける成熟度の段階を下記の5つに分類しています。

   1.  Tecnology Stack:テクノロジーツール選定
   2.  Analytics & Review Cadence:分析内容と報告時期
   3.  Digital Vendor Structure:パートナー選定
   4.  Contents & Creative Optimization:訴求の最適化
   5.  Omni-Channel Engagement:様々な場所で顧客との関係構築

 上記の2の段階を経ずにベンダーを選定すると「エージェンシーの言われるがままになってしまう」と言い、デジタルのコミュニケーションにおいてデータ分析を軽視してはいけないと呼びかけます。
 

新規ターゲット選出にメディアの影響力を活用する

 「KDDIではアクセスログやMA、オーディエンスデータを統合したDMPを軸にしたマーケティング施策を行っています。」(森本氏)


 マーケッターにとって、いかにインサイドセールスに見込み受注金額が高いターゲット情報を渡せるかが腕の見せ所です。

 「もし高い案件単価が見込まれる大手企業をターゲットとするならば、収集したデータのほとんどが非ターゲットのノイズとなってしまいます。そこで訪問者のIPアドレスから企業を特定し、従業員数、拠点数、売上などで抽出し、ターゲットを選出することができます。」(森本氏)

 このように抽出したターゲットには、まだ自社の課題に気づいていなかったり、課題には気づいていてもその解決手段を知らなかったりする層も含まれており、それぞれに届けるコンテンツを変えなくてはなりません。

 例えば、自社が抱える課題に気づいていない層には、課題啓発や解決方法の気付きを第三者から発信することが有効です。また課題に気付いている層には、課題を解決するモチベーションになる情報を発信し、さらに手段を模索している人たちには、その手段を発信する必要があります。

 「無関心、課題認知、手段模索段階の層に対して、第三者である他メディアからの発信は影響力が高いのです。ターゲット企業の中でも当社とおつきあいがある部署には営業が行くことができますし、オウンドメディアにも来てもらえます。しかし、全くアプローチができていない新規顧客を獲得するには外部のメディアの力を借りる必要があります」(森本氏)

群衆から新規ターゲットのキーマンを見つける

 当社の鵜山は、基盤を同じくする複数メディアの記事を集めることができる、テーマポータルの有用性について次のように説明します。

 「弊社が提供するCMSを利用するビジネスメディアには『ビジネスについて有益な情報を知りたい』という良質な読者が集まり、彼らの閲読情報などが大量に蓄積されています。これら複数メディアの特定テーマ記事をひとつにまとめたものがテーマポータルです。ここに集まった読者の属性情報や閲読傾向を分析し、新規ターゲットの読者を無関心層から優良顧客に向けてファネルの段階を挙げていくことに活用します」

 森本氏も「メディアが持っているデータを組み合わせることで、群衆の中から業種や興味カテゴリなどを掛け合わせた特定セグメントのターゲットを見つけることができる」とテーマポータルの利点を語ります。
 

広告主とメディアはどこまで共通認識を持っているか

 「ターゲットを絞った状態で集客と行動分析ができるため、例えば、訪問頻度が高いお客様に対してのみホワイトペーパーを送ることが可能になります。こういったPDCAを回すことによって、さらに絞り込まれた有望見込み客にたどり着くことが可能になります」(森本氏)。

 さらに、読者の閲読傾向を分析して、特定のカテゴリの記事数を増やしたりできるのもテーマポータルのメリットです。「たとえば、今は記事を1本しか読まない読者が85%だとしたら、それをいつまでに75%まで下げましょう、いう指標を作成することができます。私たちはデータを活用して未来予測をし、その意思決定を支援しています」(鵜山)

 今後はAIの自動学習モデルによる意思決定の支援も見据えるという鵜山は、属人化しない意思決定の自動化について「KDDIのファンを増やすモデルに沿った施策ができるようになることで、ゴールにたどり着く人を増やすことができるはず」と力をこめました。

 森本氏は「広告主はメディアともっと話すといい。エージェンシーも交えて共通認識を作ることが大事」とまとめました。統合的なコンテンツマーケティングを実践するために、広告主とメディアは目的に応じたコンテンツを使い分け、レポートやデータはもちろん、知見やノウハウも共有することが肝要となります。
 

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