2018.7.2
読売広告社木村朋子氏に聞く(後編)
「メディアと一緒に模索するデータ活用」
【BtoBマーケティングの現場インタビュー】
加藤 真由(日本ビジネスプレス)
メディア 分析 マーケティングBtoB企業でMA(マーケティングオートメーション)ツールの導入が進み、デジタルマーケティングの推進がますます重要になっています。デジタル活用時代に広告会社ができることは何か。そして、メディアの役割とは?
弊社 企画開発部部長の鵜山が、読売広告社 営業戦略推進局 デジタル戦略推進部の木村朋子氏に聞きました。
―――MAツールの効果をどんなところに感じますか?また今後の課題はなんでしょう。
大きい企業であるほど、持っているデータが膨大です。例えば顧客データとMAをつなぐと、顧客企業のなかでも今までコンタクトのなかった部署の人たちも自社サイトを訪問していることがわかったりします。それはマーケティングの部署からすると「新しいことが見えてきた!」となるけど、営業は「商談の直接の窓口ではないから受けられない」となることもある。
本来は全体設計をした上でMAを導入すべきですが、それは難しい。まずはどこかの部署が試験的に使い始めて、トライ&エラーを繰り返しているところが多いんですよね。お客様社内での承認に時間がかかったりもする。そのあたりも課題ですね。
また、今はまだお客様の中でも「このリードって本当に商談に結び付くの?」と、?マークがたくさんある状況です。メールでのアプローチで少しずつナーチャリングするよりも最初からセミナーやワークショップに来てもらって直に話した方が商談に結びつきやすいリードも存在します。MAのもっと効率的な使い道もあるはずです。ですから、多くの企業においてMAツールで目覚ましい成果が出た、と言えるのはこれからなのではないでしょうか。
メディアのデータからわかること
―――獲得したリードをナーチャリングするには、第三者であるメディアが発信する課題啓発などのコンテンツに触れることが有効だと考えています。木村さんは、クライアントのデータとメディアのデータを横断的に見ていますね。
関連分野の記事をどういう人たちが読んでいるのか、可視化できるのは驚きです。たとえば、お客様のメールには反応してくれない人が、メディアのとある記事を見ていて、競合の導入を検討しているのかもと推察できることがある。そのときは、メルマガではなく、すぐにアポを取りにいくなどの対応をとることも可能です。
またMAに入ってナーチャリングしていると思いきや、それは競合と比較されている状態でもあるのです。リードを獲れると自分たちだけがコミュニケーションできる気になってしまいますが、コンタクトをとれるようになっただけで、競合の情報にも接触しています。外部メディアでの行動データは有益で、そこがMAとつなぎこめたら需要があります。
またリードの数が多くても質が悪ければ労力がかかってしまうので、リードの質の担保が求められています。そこは優良なメディアと組んで、課題意識や購買意欲についてのアンケートなどを実施して可視化できるのではないかと考えています。
―――データを扱う上で気を付けていることはなんでしょうか。
何がお客様にとって必要な情報なのか、PDCAを回すにあたって重要なファクターなのかを見極めることです。粒度を細かくしすぎず、こんなこともわかるんだっていう期待感も持っていただきつつ、無駄のないように。いろいろ見えるが故の絞る大変さもあります。現場の担当者レベルだけしかツールを見ないお客様もいらっしゃいますので、お客様に合わせて微調整しないといけないですね。
―――今後はどういうデータがあるといいでしょうか?
長いスパンでのアトリビューションが見られるようにしないといけないですね。これは1メディアだけではできないし、私たちだけでもできない。広告会社とメディアとお客様と一緒にやらないといけないことです。それに、広告会社が各メディアからそれぞれデータをもらうのは大変な手間がかかります。
―――日本ビジネスプレスのisMediaでは基盤を同じくして複数のメディアのデータを横断的に管理できます。
複数のメディアのデータを使った分析には説得力があります。ターゲットがこんなことに興味を持っているようだとか、こんな記事を読むとお客様のコーポレートサイトにも来訪しやすくなるとか、媒体を横断して分析できることに大きな価値があると思っています。ターゲットの全体での行動が見えれば、後半のMAのシナリオにもいかしていけると思っています。
―――メディア側に何を望みますか?
まずはいかに質と量を担保したリードを取っていけるか、今後BtoBに関してはその流れが強くなると思いますので、そのお手伝いをメディアにしていただきたいです。それから商品やサービスをきちんと理解してもらった上で、リードとブランディングの両立と健全なバランスを目指していきたいと思っています。その説得材料をメディアと一緒に模索していきたいですね。
(内容はすべて執筆時の情報です)