2020.8.7

コロナ禍、そしてその先を見据えBtoBマーケティングはどのようにあるべきなのか ~ 日本HP 甲斐博一氏に聞く ~

オンラインセミナーレポート(1)

日本ビジネスプレス

メディア マーケティング
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 JBpressの広告は、主にITやコンサルティングファームなどBtoBの企業さまに支えていただいています。しかし今、このBtoBのマーケティングが、コロナ禍以降、大きく変化を迫られています。

 リアルなセミナーや展示会などを中心に、BtoBマーケティングは一層のデジタルシフトを余儀なくされています。そのような状況に対応していくべく、日本ビジネスプレスでは、2020年7月17日(金)に最新の事例や新しい商品企画などを紹介するオンラインセミナーを、2部構成で開催しました。

 第1部は、日本HPの甲斐博一氏にゲストとして登場していただき、コロナ禍、そしてその先を見据えBtoBマーケティングはどのようにあるべきなのか、お話しいただきました。甲斐さんは、BtoBとBtoCの両方の立場からマーケティングに20年携わってきた、マーケティングのスペシャリストです。

 また第2部では、コロナ禍以降、JBpressがこれまで開催してきたオンラインセミナーの事例について、そして新企画となるバーチャル展示会について、ご紹介をさせていただきました。

 ここでは、まず第1部の内容をダイジェストでご紹介します。

第2部レポート「JBpressを活用したこれからのBtoBマーケティング ~ 新企画「バーチャル展示会」を開催 ~」はこちら

■生産性向上のための「顧客理解」

 第1部は、「WithでもAfterでも変わらぬBtoBマーケティングの本質と、変えていくべき実践方法をブランドの立場から一挙解説」という題で、日本HPの甲斐さんにお話をいただきました。聞き手は日本ビジネスプレスの鵜山です。
 

 

 
―まず甲斐さんは、BtoBマーケティングを考える前に、BtoBビジネスの本質を理解しておくことが重要だと指摘します。その本質とは何なのでしょうか。

「BtoBビジネスの変わらぬ本質というのは、お客様である企業の生産性を上げることに尽きると考えています」
 

―GDPでは世界3位に位置する日本が、生産性は先進国の中でも取り立てて低いとされています。その理由を甲斐さんは、成長しない中小企業、テクノロジー利活用におけるリテラシー、年功序列が引きおこす組織構造の硬直化と労働時間の長さなどにあると指摘します。

「生産性が低いというのは、労働時間に対する給与が低いことも同時に意味しています。この差は他の先進諸国との差を見れば明らかです。低い給与で労働時間が長くなるという構造を解消しないと、日本人は幸せになれません。そのためには企業の生産性を上げなければいけないと考えています」
 

―では、どのようにすればお客様の生産性向上に貢献できるのでしょうか。甲斐さんはアプローチのキーワードとして「顧客理解」を挙げます。

「問題そのものに、クライアント自身が気付いていないことが多いのです。お客様は神様ではなくパートナーです。一緒に問題の本質を理解し合って、それに対してどういうことをやっていけるか考えていける関係性を築くことが、どんなビジネスにおいても重要な一歩になるのではないでしょうか。また問題の本質はB2Bビジネスの場合、その相手となる企業だけではなく、最終エンドユーザーのことを理解しなければ見えてきません。このこともあわせて顧客理解の大きなポイントです」
 

―また、「顧客」となる企業と向かい合うとき、見失ってはいけない視点があります。大事なのは「人」だと甲斐さんは言います。

「お客様のヒエラルキーや意思決定のメカニズムを、ちゃんと把握しないといけません。そのときに対峙するのは、企業体ではなくて、その中にいる人です。人が顧客の接点になるので、企業を企業としてだけ語っていてはダメで、どうやって人と企業の両方を攻略するかよく考えないといけません」
 

―企業と人、複雑な関係をひもときながら顧客を理解していくわけですが、その構造は不変のものではありません。それらは時間によって移り変わっていくものです。甲斐さんは、BtoBマーケティングにおける「時間軸」の重要性を説明します。

「最初に、時間軸をきちんと設定してマーケティングプランを立てないといけません。それができたらチャネルを整理して、接点をどういう形でとっていくか、どこに比重を置いていくか考えます。最初の関係づくりのプロセスですね。そのうえでお客様を理解しながらビジョンをどうやって共有していくかストーリーを考えます。そしてチャネルに合わせてクリエイティブも生成して実行、もちろんチャネルごとに発生するデータも連携させます。最後に一連の活動を統合しながら、それぞれのプログラムの評価をしていきますが、ROIも時間軸を伴って設計していくことが重要ですね」
 

■変わるオンラインと「リアル」の価値

―今回のコロナ禍で、我々が体験しているデジタルがもたらした便利さを中心とする価値は今後の基準となっていくものと思います。では、その流れの先、既存のチャネルやプログラムはどう変わっていくのでしょうか。引き続き、甲斐さんに聞いていきます。

「まずデジタルシフトが強烈に進んでいくというのが最初のポイントだと思います。すでにB2BマーケターのほぼすべてがWebinarを実践していると思いますが、今後はオフラインの代替ではなく、このようなデジタル体験がベースになっていきます。このときに、オフラインで実行していたものをそのままオンラインにもっていっても体験価値は下がるだけですので、イベント、セミナーをデジタルネイティブに変えなければ、今はよくてもおそらくその先は長続きしなくなると思います」
 

 

―オンラインとオフライン、デジタルとリアル、それぞれの長所を生かしていくのが重要です。オンラインへとシフトしつつ、リアルをどう生かしていけばいいのでしょうか。

「人の体験はデジタルとリアルの組み合わせです。お客様の行動をデジタルで把握しながらも、お客様の気持ちや状況を理解しながら、リアルでも接点を上手に作る。これはB2BでもB2Cでも今後の基本となると考えています。リアルの貴重性は非常に高いので、ここぞというときにリアルの接点を作るという設計がすごく大事です」
 

―いま起きているデジタルシフトの中で、デジタルのデータを分析しやすくなり、ユーザー側も情報収集が容易になりました。一方でユーザーが意識していなかった情報への気づきなど、コンテンツが氾濫しつつある時代ならではの課題もあります。どのようにしてコンテンツを提供していくべきでしょうか。

「お客様を理解しないと何が正解か分かりませんので、まずはコンテンツを広く用意して、どれがどのタイプのお客様にあっているのか学習しながら、どこに注力していくか判断することになります。お客様がどんな人で、何を欲していて、それに対して自分たちのコンテンツは本当にミートするのかどうか、表現がこれでいいのか、伝え方も含めて考えていかなければなりません。またさらにB2Bではその個人の集合体を企業として認識していくこともとても重要な作業になります」
 

―マーケティングの場面ではデータの活用機会が増えてきていますが、まだ営業の現場ではリアルが重要視されています。その間では衝突もあるかもしれませんが、今後その辺りは変わってくるのでしょうか。

「少し先の未来、お客様の状態を行動から理解することができるようになると思いますが、気持ちのところはデータに現れにくいので想像するしかありません。そこに、営業のみなさんの経験とセンスみたいなものがミックスされると、顧客理解も進むと思っています。その結果、お客様の企業としての課題、それとつながる個人が抱えている問題を解決させ、生産性向上に貢献できる関係性が理想だと思いますし、自分たちもそういう努力をしていきたいと思います」
 

 
第2部レポート「JBpressのオンラインセミナー事例と新企画バーチャル展示会について」はこちら
 

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