2021.11.19

メディアでの「ヒートマップツール」活用のススメ(3)ヒートマップツールの活用方法

小川 卓(株式会社日本ビジネスプレスCAO)

分析 メディア
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

前回の記事では5種類のヒートマップの種類に関して紹介いたしました。今回の記事ではヒートマップを使って、どのように課題を発見するのか。例を交えながら、改善に役立つヒートマップの活用方法を紹介いたします。

サイト改善におけるヒートマップツールの役割

ウェブサイトの課題となるページや気づきはアクセス解析ツールを活用することが多いです。そして課題となったページやページ群がなぜそのような結果になっているのか?これを調査するのがヒートマップツールです。

そしてそこから仮説と施策を考えて、実行するためにABテストを行います。このようにヒートマップツールは「原因を特定する」上で欠かせないツールになります。
 

実例1:アクションへの導線を改善する

例えばあるタイアップ記事で、応募をしてもらうことが目的だとします。しかし残念ながら応募ボタンを押してくれる割合が低く、改善が必要であることがアクセス解析からわかりました。そのページのスクロールヒートマップを見てみることにしました。

この時に赤枠の部分がお申し込みボタンの位置だとしましょう。実際にこのエリアまでスクロールしている割合は10%を切っていました。つまり記事を見た人の10人に1人しか応募ボタンまで見ていないということです。

この場合「応募ボタン」の位置が問題になります。応募ボタンを上に持ってくる あるいはより読んでもらえるようなターゲットユーザーを連れてくる、離脱しているポイントを中心に改善を行うなどが考えられます。

しかし、応募ボタンの位置が、より上部である青枠の位置にあったとしましょう。この場合は、約79%がこのエリアまでスクロールしていました。この場合、問題になるのは応募ボタンの位置ではありません。なぜなら既に多くの方が見てくれているからです。この場合は、その手間のキャッチコピーや画像に問題があるかもしれません。

サイトに来ているユーザーが期待している内容ではないということが考えられます。この場合は上部のコンテンツ見直しや、集客元で出しているクリエイティブの統一感が改善ポイントになります。

このようにヒートマップを使うことでアクセス解析では取得出来ない問題の切り分けを行い、対策を考えることが出来ます。もう1つ実例を見てみましょう。
 

実例2:コンバージョンした人とコンバージョンしていない人の違いを見る

ヒートマップは単体で見るのではなく、比較して見ることで気づきを発見することが出来ます。例えば有料会員登録を促すランディングページを作成したとしましょう。こういったランディングページは通常コンバージョン率は数%です。

という事はページ全体のデータやヒートマップを見ても「コンバージョンしていない97%」のユーザーの分析を行うことになってしまいます。そこで便利なのが多くのヒートマップツールで利用出来る「セグメント機能」です。

セグメント機能とはヒートマップを表示する際に、ある条件を満たした閲覧だけを抽出するという機能です。代表的なものはデバイス種別や新規・リピートなどがあります。

今回活用するのは、CV有無によるヒートマップの比較です。それでは早速見てみましょう。

左側がコンバージョンした人のルッキングヒートマップ、右側がコンバージョンしていない人のルッキングヒートマップになります。色が赤や黄色に近いほどマウスがその位置にいたということを表しています。

CVしていない人としている人は閲覧場所が違うのがわかります。CVしていない人は上部のコンテンツを見ているが、CVしている人は最下部右側のコンテンツを見ている傾向があります。

しかしCVする人が注目しているコンテンツはページ最下部にあったため、スクロール率は半分未満でした。せっかく成果に繋がるコンテンツなのに多くの方に見せることが出来ていないという状況です。

そこで改善策を考えました。とってもシンプルです。ページ下部にある、成果に繋がる人が見ているコンテンツをページ上部に持ってきたのです。これによりCV率が1.3倍に改善いたしました。この分析もまさにヒートマップだから出来る分析内容です。

まとめ

全3回に渡ってヒートマップツールとその活用方法を紹介してきました。アクセス解析ツールほどメジャーなツールではありませんが、アクセス解析ツールではわからない気づきを発見することが可能です。特に原因特定やユーザーの思いが伝わってくるというのがヒートマップの特徴であり、改善施策を考える上での大きなヒントを与えてくれます。

まだ導入されていない企業は、ぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。アクセス解析は数値ばかりですが、ヒートマップはビジュアルでわかりやすく、上司やクライアントへの伝わりやすさも段違いです。
 

第1回:アクセス解析と何が違うの?
第2回:5種類のヒートマップ

株式会社日本ビジネスプレスCAO

小川 卓

【プロフィール】University College London (UCL:英国)・早稲田大学大学院理工学研究科を卒業。渡米・渡英合計14年。TOEIC 965点(2010年)・GAIQ(2017年)・ウェブ解析士マスター(2016年)。趣味はピアノ・テレビゲーム・サッカー・温泉。ウェブアナリストとしてリクルート、サイバーエージェント、アマゾンジャパン等で勤務後、独立。複数社の社外取締役、大学院の客員教授などを通じてウェブ解析の啓蒙・浸透に従事。株式会社HAPPY ANALYTICS代表取締役。2018年3月より株式会社日本ビジネスプレスCAO。

 

※日本ビジネスプレスではMediaWeaver(メディアウィーバー)をご利用のメディア様向けに「グロースハックコンサルティングサービス」を行っております。ぜひ担当者までお声掛けください。

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加